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Novel

地下鉄

私はいつものように会社から帰宅するため、地下鉄に乗った。

地下鉄は、帰途につくサラリーマンでいっぱいだった。

今日は、めずらしく座ることができた。

私の家は終点の駅にある。立っていてもそのうち座る事が出来るのだが、

今日のように始から座れるのはごく稀であった。

私はしばらく眠ることにした。

どれくらい眠ったのだろう。私は誰かにゆり動かされて目が覚めた。

知らない初老の男が私を揺すっていた。

「もしもし、乗り越されてませんか?」

私は、ハッとして行き先を告げた。

「ああ、それならもう過ぎましたよ。」

初老の男は少し残念そうな顔をした。

「もう少し早く起してあげるべきでした。」

私は、しまったと思った。また折り返して、ずっと乗っていたのだ。

まあいい。次の駅で折り返そう。

「すいません。有難うございます。」

私は、彼に礼をいった。

「おつかれですね。今お帰りですか。」

「ええ、今日は早く帰るつもりだったんですが・・・。」

S.T

「それも、今日で定年です。」

彼は30年勤めた会社を今日で定年になるらしい。

「会社一辺倒できた私にはどうしたらいいものか・・で。」

そう言うと彼は言葉につまり、そのまま黙ってしまった。

深く詮索して失礼にならないように。私は話すのをやめた。

車内はいつのまにか人数が減り、私と彼の他に老人が一人いるだけだった。

さっきから、かなりの時間が経過しているのにもかかわらず、

いっこうに次の駅につく気配がない。

「なかなか駅につきませんね。」

私が彼に言うと、彼は困った顔をした。

「この電車は止まらないんですよ。」

私には、彼の言うことが理解できなかった。

「ごらんなさい外を。」

彼に言われ外を見ると、地下鉄は虚無の中を走っていた。

 

FIN

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すべての内容は空想であり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。